二十三番〜3

sumi

2009年10月31日 17:50

今日もよい天気。暑いくらいだ。湿っていたテントと寝袋を陰干しして少し遅めに出発する。延々と海岸沿いの国道を行く。足は昨日より全然いい感じだ。数分歩くと高知県に入った。やっとの二県目はあっさりやってきた。
しかし、高知の浜辺はサーファーが多い。この時期に人が海に入っているのは、瀬戸内海で育った僕には物珍し光景だ。すれ違う人々もサーファー。今日すれ違う人々はこっちを見てくれない。これまでの行程の人々は何かとこちらを気に止めて見てくれているようで、歓迎されているように感じていた。しかし、今日は風景は田舎だが街中を歩いているようだった。
誤解を恐れず述べる。死装束を纏い、己れの墓標を手にし、傘で顔を隠すことで自らの身分をも隠すのが遍路の姿である。これは端から見れば「死」を連想させ、しかも顔を隠した何者でもない存在である。しかもそんな存在がフラ〜っと生活の場に現れる。地元で生活を営む人々にとって、本来遍路は忌むべき存在であり、突如現れる人外の者なのかもしれない。もっと言えば、遍路とは歓迎せざるべき者である。そんな者へでも接待するということは、「死」でも「わけのわからない者」でも「よそ者」でも受け入れ一体化するということである。四国の度量の大きさを今更ながら感じた。地元で生活する人々が持った、そんな者でも歓迎し接待するという心は、遍路にとって余計にありがたいものだ。
今日は歩き遍路の方とは全く会わなかった。追い越してゆくのは自転車遍路の方々ばかり。独りで歩いているように感じられた。いつもと雰囲気が違う。今日は歩いただけだった。最後に野宿地を見つけ、近寄ると先客がいた。初老の男性一人と若い男性二人。
釣りに来られてこれから帰るそうだ。
初老の男性と少し話した。本日初のトークである。
「歩いて廻るん?考えられんわ〜」
「でも、車ではいつか行ってみたいと思ってるんよ」
「思ってるだけやけどな〜」
お茶目である。言ってる目は冒険好きの男の子だった。
缶コーヒー二本とパンを幾らか頂いた。ありがたい。
「気を付けてな〜」
と別れた。

海に向かって少し坐ってみた。なにも起こらなかった。

明日には室戸岬に着きたい。

関連記事