三十七番〜3

sumi

2009年11月15日 21:22

今朝は良く冷えた。銀色のシートを掛布団の様にして寝袋の上から掛けていたのだが、朝銀色のシートが結露して寝袋が濡れてしまっていた。何かいい方法を考えないと。
寒いのでなかなか身体が動かない。遅めのテント撤収。三枚重ね着をして出発した。いままでだと一時間も歩けば半袖になっていたが当分長袖で歩く。
ビニールハウスの間を歩いていると若いお兄ちゃんに声をかけられた。
「どちらからですか?」
「岡山です。このハウスは何を作ってるの?」
「パイナップルです」
「高知でも作れるんだ」
「灯油使いますけどね」
パイナップルはヤシの木の一番上になるのではない。ビニールハウスで作れるのだから。
話を聞くと市が作っているパイナップルらしい。これから売り出すつもりらしい。どこも特産品を作り出すのに必死だ。外貨獲得ならぬ他県のお金を獲得するために。
また暫し歩くと
「遍路さん割引あります。」
と煙突から煙を出している建物に看板が掛かっていた。何だろうと近づいてみると民宿と一緒になったお風呂屋だった。
「天然水を薪で沸かしてます。」
煙の理由が解った。入ってみることにした。店内は小綺麗なカフェみたいな雰囲気。雑貨やパンフレットが置いてあり、泊まり客なのか何人か人もいる。
「やばい。僕の嫌いなエコでロハスでインテリで、それをオシャレにしてる感じだ。」
内心思ったが仕方ないので入らせて頂いた。
お湯は本当に軟らかい感じで長く浸かっていても嫌にならなかった。昔の人はこんなお風呂に入ってたのか。羽毛布団にくるまれている様な感じだった。とにかく家庭の風呂とも温泉とも違った。
お風呂に感謝して歩き始める。後少しで足摺岬だ。海岸を歩く遍路道もあった。天気がいい。海も綺麗だ。道を掃除してるおばちゃんにあいさつをする。
「こんにちは」
「こんにちは。荷物大きくて大変やね〜」
「よく言われるんですよ〜」
「ちょっと待っとき。柿あげるから」
おばあちゃんはヒョコヒョコ歩いて家に帰り、ヒョコヒョコ柿を持って来てくれた。
「女の子はな〜真面目で地味な娘にしときよ。」
急にである。よっぽど騙されそうに見えたのだろうか。
「若い時は綺麗な娘がいいけどな〜皆歳をとるんや」「綺麗にしとる娘は綺麗にするために金使うんや。」
「恋はせないかん」
本当に唐突だ。
「おばあちゃんは恋したん?」
切り返す。
「したで〜大阪に出ててな〜結婚も出来ない人に恋したんや〜」
面白くない話だとそれ以上は話してくれなかった。
よく見ると昔は綺麗な人だったんだろうなという顔の造りをしていた。想像だが大阪で派手に過ごして不倫でもしたのだろうか。子どももいないと言っていた。恋に破れて土佐に帰って来たのだろうか。まだ大昔のその人を想っているのだろうか。
「地味な娘がいい」
と言うのは自己反省も込めた話なのか。
「おばあちゃんの言ったこと思い出して歩き。」
そう言われて別れた。おばあちゃんに終始愁いは見えなかった。大阪時代を忘れてはないが苦しくもない。情念は鎮められたのだろう。
時間的に足摺岬の寺に行けたが足摺岬でテントを張るのは止めようと思っていた。室戸岬の時の様な風が吹いていると思ったからだ。
四国には善根宿という宿泊施設がある。歩き遍路の為の施設なのだか無料または格安な料金で宿泊が出来る。今日はそこに泊めて頂くことにした。
管理人をしているらしいお兄ちゃんに声をかけて泊めて頂くようにした。
話をしていると絵描きさんらしい。絵を売りながら旅をしているが今はここで管理人のような生活をしているとのこと。
「ここは薪で沸かした風呂があるよ」
まただ。
沸かす所を見せてもらった。釜に薪くべて湯を沸かす。
「ポコッポコッポコッ」
と気泡が立つ。時間がかかる。何人か入ると冷めてくるので、最初は熱めに沸かすらしい。今日は風呂三昧な1日だった。

明日はついに足摺岬の予定。

関連記事