2009年11月03日
二十六番〜

早々にテントを撤収し出発する。歩きやすい。風も気温も丁度いい。
淡々と歩く。やっと歩くことに集中出来るようになってきた気がする。
海沿いを歩いているが、室戸岬までの様子とは違い民家もあり、人もいる。
漁港では老人たちが日向ぼっこをしていた。
国道は海沿いを走っているのだが、遍路の道は峠を越えるコースになっていた。どちらでも行けるのだが敢えて峠越えのコースを選んだ。山道に入ると今までの山道とは違うことに気づく。綺麗に落葉が掃いてあり、新しく階段を作った形跡があった。
「誰かが小まめに手入れをしてくれているんだな」
そう思って歩いていると
「ザッ ザッ ザッ」
と箒で掃く音がしてきた。おじいちゃんが山道を掃いていた。手入れをしている人を発見した。
「こんにちは。おじいちゃんがこの道を手入れしとん?凄い歩きやすいわ〜」
「そうじゃ〜ワシがやってるんじゃ」
「一人で?」
「一人やな〜運動がてら妻の供養も兼ねてやってるんや〜ワシはもう歩けないからお参りの代わりに手入れしてるんや〜」
「お遍路さんが、喜んで歩いてくれるから嬉しいんや〜」
話はまだ続く。
「この道はな〜忘れられてた道なんや〜それをな宮崎さんって人が復活させて、ワシが手入れさせてもらってるんや」
「最初は土が削れて、木が覆い被さって、歩けないような状態やったんや。木を切って石畳を敷いて階段を作ってをしたんや〜」
宮崎さんってのは遍路協会の偉い人らしい。帰ったら調べてみよう。
忘れられ最初は獣道の様になっていた道に手を入れ歩きやすくしてきたおじいちゃんはとても誇らしげだった。
別れ際に
「元気でな」
と言われた。
「おじいちゃんも」
と。
この別れの挨拶になにか「ドキッ」とした。今まで、さっき出会ったばかりの人とそんな挨拶をしたことが無かった。もうこのおじいちゃんには会えないんだなと思った。
峠を越え、海沿いに出る。また車に追い抜かれながら淡々と歩く。今日の目的地の温泉に到着し入浴。
温泉の隣の公園にテントを張り野宿。今晩も冷えるらしい。