2009年11月12日
三十七番


三十七番に着くとその彼が門前の商店でお経を読んでいた。そう言えば昨晩、飛び込み営業みたいにして托鉢をしてると言ってたな。
「ピーンポーン」
「般若心経を読ませて下さい」
「摩可般若〜…」
「チャリ〜ン」
手にしたお椀にお金を入れてもらう。
きっとこんな流れだろう。たくましい。
飛び込みで営業をしてた頃を思い出す。
彼のお経が終わりあいさつ。
「おはよ〜」
「たくましいね」
彼はニヤケ笑い。
「時間ある?」
と彼。
「あるよ」
と答えるとパンとみかんを分けてくれた。ありがたい。
参門から境内が少し見えた。銀杏の落葉が一面に敷き詰められてとても綺麗だった。
納経を終え暫し彼とおしゃべり。
「悩みある?」
と彼。
「朝晩寒いこと」
「そういうことじゃなくて〜」
彼はカミングアウトを始めた。話を一通り聞いた。
「もっと悩んだらいいやん」とだけ。
話の途中で夫婦連れのお遍路さんに声をかけられた。
「バイク遍路ですか?」
「いえ。歩きです。」
どうも歩いてる様に見えないらしい。インド哲学の彼は歩きに見えるらしい。これは大問題だ。
そろそろ出発。インド哲学の彼は荷物の整理をするらしく、もう少し境内にいるとのこと。
一人で歩き出す。県道を歩き、たまには山道のへんろ道に入りまた歩く。
夕方頃にやっと海が見えた。今日は海沿いの公園で野宿。人とあまり話さなかった1日だった。